医師の当直回数に上限がある?働き方改革前に知っておくべき当直制度

当直と聞くと、どのような勤務を思い浮かべますか?

夜間や休日に救急対応で診察したり、入院患者の急変に対応することでしょ?

こんなイメージが一般的なのではないでしょうか。

でも、今イメージした当直は本来の当直ではないかもしれません。

あいまいな線引きのまま導入されている当直という制度について、改めて考えていきたいと思います。

当直の定義とは?

勤務医の皆さんにとって、当直は当たり前の働き方かもしれません。

でも、そもそも当直ってどんな制度か知っていますか?

実は、労働基準法に規定があります。

労働基準法第41条では、次の各項に該当する労働者については、労働時間、休憩及び休日に関する規定から除外すると定められています。

そこに、いわゆる医師の当直が含まれているのです。

一般的に当直と呼ばれていますが、法律上は宿日直という扱いになります。

つまり、法律上の宿日直は、労働時間に含まれず、休憩等の確保も求められていません。

皆さんがイメージする当直がこれに該当するとなると、「労働者にとって扱いが厳しすぎるのでは?」と思いますよね。

その疑問については、次の項目で、詳しく解説していきます。

宿日直に該当する条件

法律上の宿日直に該当するためには厳格な条件があります。

  • 常態としてほとんど労働する必要がない勤務であること。
  • 相当な睡眠設備を確保し、夜間に十分な睡眠時間が確保できるものであること。
  • 通常業務の延長ではなく、通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のものであること。
  • 通常勤務と同態様の業務が発生したとしても稀であること。

以上の条件を満たした上で、労働基準監督署の許可を得ることによって、宿日直という勤務が可能になります。

いわゆる寝当直と呼ばれるものがこれにあたると言えるでしょう。

逆に考えると、皆さんが通常行っている当直が通常の労働と同内容で、通常勤務の延長として行われているのであれば、それは当直ではなく夜勤なのです。

夜勤であれば、当然、労働時間に該当します。

その場合は、労働基準法が適用されます。

なので、法定労働時間を過ぎた勤務については、時間外労働として扱われます。

上限回数について

法律上の宿日直には、上限回数が定められています。

宿直は週1回、日直は月1回以内です。

ただし、医師不足の地域の医療機関では、宿日直の体制を確保するために遠方から非常勤の医師を確保しなければならないという実態もみられるため、医療機関の状況によっては、限定的に例外が認められる場合もあるようです。

皆さんが実際に勤務している当直は、どのような勤務形態ですか?

職場での取り扱いが不明瞭であれば、一度、きちんと確認することをおすすめします。

さて、改めて当直について説明してきました。

実はある制度改革を控えている今、当直の扱いに注目が集まっているのはご存じでしたか?

2024年4月1日に迫る医師の働き方改革とは?

そう、その制度改革というのが、医師の働き方改革です。

現場で働く医師の皆さんは、働き方改革についてどのように考えていますか?

日常業務に忙殺されて、考える暇もないよという皆さんのために、分かりやすく解説していきたいと思います。

時間外労働に上限ができる

A水準(原則)年間960時間 月100時間未満
B水準(※1)年間1860時間 月100時間未満
C水準(※2)年間1860時間 月100時間未満
参考:厚生労働省 第12回医師の働き方改革の推進に関する検討会資料「医師の勤務実態把握マニュアル」

※1:地域医療提供体制確保のため、副業・兼業を行っている場合に両方の労働時間を合わせると原則を超える場合。

※2:臨床研修医や専攻医が一定期間集中的に数多くの診療を行い、技能を習得するために必要な場合。

2019年に始まった働き方改革ですが、医師についてはその適用が猶予されてきました。

しかし、2024年4月1日からは、医師についても労働時間が厳しく規制されていくのです。

さらに、この場合の労働時間には副業や兼業先の労働時間も含まれることになります。

連続勤務時間が制限される

連続して勤務できる時間は、前日の勤務開始から28時間までに制限されます。

臨床研修医については、15時間までです。

ただし、指導医に合わせた勤務が必要な場合には、24時間まで認められます。

勤務間インターバルが必要

勤務と勤務の間にインターバルを設けることが必要になります。

必要なインターバル時間は9時間以上です。

さらに、当直明けの日については、別途定められています。

宿日直許可がない場合は、28時間までの勤務時間制限をした上で、インターバル時間を18時間以上設けなければなりません。

代償休息を与えなければならない

長時間の手術や急患対応により、休息が取れなかった場合に適用されます。

休息が取れなかった時間数について、事後的に代償休息を与え、医師の疲労回復を図らなければなりません。

なぜ、当直(宿日直)が注目されているのか?

皆さんは、もう気づきましたよね。

そうです。

2024年4月1日から適用される医師の働き方改革により、労働時間が厳しく規制されるのです。

つまり、医師としての勤務が労働時間に該当するのか、除外されるのかは勤務管理実施者にとっては、大きなポイントになります。

時間外労働の上限規制や連続勤務時間、勤務間インターバルを検討する際に、宿日直に該当すれば労働時間から除外することができるのです。

そのため、働く医師も、自分の労働環境を守るために知識を深める必要があります。

もし、制度を知らなければ、これまでのように自己犠牲ありきの厳しい労働環境で働き続けなければなりません。

今後の働き方はどう変わる?

まず、医師の労働時間管理がより重要になってきます。

これまでの医師の労働環境は、長時間労働が当たり前とされ、休日の確保が困難なものでした。

命を守るのが仕事だからと、医師の自己犠牲の上に成り立ってきたものです。

しかし、医師も労働者である以上、働きやすい環境が作られるべきです。

なので、当然の改革と言えるのではないでしょうか?

一方で、非常勤先からの収入減で年収が減ってしまうのではという不安な声も聞こえてきます。

一般的に、医師は高収入というイメージがあります。

しかし、大学病院の勤務医等は、副業や兼業を行って生活を維持しているのが現状です。

そんな中、副業や兼業先もすべて含めた労働時間管理が求められるようになります。

したがって、兼業先の医療機関が宿日直の許可を取得しているのかが大きなポイントとなります。

宿日直には上限がありますが、それぞれの医療機関での上限回数です。

兼業する際には、よく確認するようにしましょう。

以上のことから、これまでの副業のあり方が、大きく変わる転機となる可能性があります。

まとめ

いかがでしたか?

医師の働き方改革の適用を目前に控えた今、当直制度について改めて考えてみました。

現場からすれば、「働き方改革なんて建前だけで、何も変わらないんでしょ?」という声が聞こえてきそうですね。

では、今回の働き方改革を実効性のあるものにするためには、どうしたらいいのでしょうか?

事業主が本気になって取り組むべきなのは、当然です。

併せて、現場の医師の意識改革も必要になってくると思います。

当たり前と考えていたところから、本当にそうかなと見つめなおしてみませんか?

その上で、医療行政による体制整備や多職種の協力、患者さんの理解が不可欠になってくるのではないでしょうか。

自分の働きやすい環境は、自分でつかみ取るくらいの気持ちで、労働条件を見直してみてください。

もし、転職を検討する場合には、経験豊富な転職エージェントに相談することをおすすめします。

働き方改革に積極的な医療機関の情報が聞けると思いますよ。

自分が望む労働環境で、能力を発揮できるよう応援しています。

おすすめの転職サイト

民間医局公式HPはコチラ

他おすすめサイト:徹底調査!医師転職サイトおすすめランキング

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)