男は助産師になれない?日本と海外の男性助産師について解説

歳の離れたきょうだいが産まれた男の子。お母さんの妊娠から出産を見守る機会がありました。

男の子は生命の誕生に感動し、助産師になりたいと考えました。

でも男の助産師ってあまり聞いたことがないな。

男でも助産師になれるのだろうか?

 男の助産師は多いのかな?

男性助産師に興味のある方へ解説します。

男性は助産師になれるの?

現在の日本では、男性は助産師になれません

第三条 この法律において「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。

引用:厚生労働省 保健師助産師看護師法

保健師助産師看護師法にあるように、助産師の業務につけるのは女子のみとなっています。

男性が助産師になるには、保健師助産師看護師法が改正され、法律が変わる必要があります。

そもそも助産師ってどんな職業?

助産師のしごと

助産師とは妊娠から出産、産後のケアや新生児ケアをサポートする専門職です。

厚生労働省の令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)によると、全国で37940人が働いています。

現在、助産師のほとんどは病院か診療所で働いていますが、助産院を開くことも可能です。

おもな仕事は以下になります。

  • 妊娠から産後までの母子の保健指導
  • 育児指導や不妊治療の相談
  • 正常な経過の妊娠、出産の分娩介助
  • 思春期、更年期の相談

助産師になるには

  • 看護師と助産師の国家試験を両方受験して、合格する必要があります。
  • 国家試験を受験するためには、専門教育を受ける必要があります。
  • 例年、試験は2月、合格発表は3月におこなわれます。
  • 助産師の資格だけを先に取得することはできません。
引用:厚生労働省 job tag(職業情報提供サイト)

助産師の歴史

江戸時代、助産師は「産婆」という名称で分娩介助、産後の女性や新生児の世話をしていました。

明治時代から大正時代にかけて、正常分娩の介助を行う男性「男性産婆」が、群馬県、新潟県、長崎県にいました。

明治時代になると法整備がすすみ、産婆の資格、試験、業務範囲などが規定されていきました。

地方に法律が普及するのは大変ゆっくりだったそうですが、男性産婆はいなくなっていきました。1

1948(昭和23)年に「保健婦助産婦看護婦法」が制定されます。

「産婆」が「助産婦」と名称変更し、助産婦教育制度が定められました。

2002(平成14)年に「保健師助産師看護師法」へ改正されました。

このとき「助産婦」から「助産」に名称変更がありました。助産師は女性のみなることができます。

ちなみに、1968(昭和43年)に男性看護人は、「看護士」へ名称変更。

1993(平成5年)には男性も「保健士」として業務をおこなうことが認められます。

2002年(平成14年)「保健師助産師看護師法」へ改正されたときに、「看護婦」→「看護」、「保健婦」→「保健」と名称変更されました。

性別は関係なく資格を取ることができます。

日本で、男性はなぜ助産師になれないの?

男性助産師、賛成?反対?

1984 年より保健師と同様に、日本看護協会では男性に助産師資格を認めるかが議論がされました。

1993 年の総会決議で、男性助産師の導入についても進めることになりました。

しかし、当時の日本助産師会は反対の意向が強く、時期尚早ともされ、保健師のみの改正になり、助産師は先送りされた経緯があります。

男女平等や差別思想の廃止の視点から、導入に賛成の意見もあります。

海外には男性助産師がいる

海外に、男性助産師はいるのでしょうか?

アメリカ合衆国、フランス、オランダ、ノルウエー、スペイン、スウェーデン、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどには、少数ですが男性助産師はいます

女性のみの国は日本、韓国、台湾、中国、インド、マレーシアなどです。

韓国や台湾は規制はありませんが、実態として存在していません。

カンボジア、サウジアラビア、アフガニスタン、ブルネイダルエスサラームでは、男性が助産師免許を取得することが禁じられています。

海外の助産師資格

日本では看護師資格を持っていないと、助産師になることはできません。

海外では看護師資格を必要としない、ダイレクトエントリー(DE)課程という助産師の教育方法を取り入れている国があります。

DE課程のある国DE課程のない国
フィリピン、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、オランダ、フランスなど日本、韓国、中国、インド、サウジアラビア、スウェーデン、スペイン、アメリカ
参考:日本看護協会健康政策部資料2021年12月 世界の助産情勢(教育、規制)
 より作成

国際助産師連盟(International Confederation of Midwives)は助産師教育課程の最低年限を、DE課程では3年間、看護基礎教育修了者では最短でも18か月間を提唱しています。

・最低限のエントリーレベルは中等教育修了者。
・ダイレクトエントリーの助産師教育課程の最低期間は 3 年間。
・看護の基礎教育修了者/医療従事者に関する教育課程の最短期間は 18 か月間。

引用:日本看護協会 助産師教育の世界基準(2010)

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母子保健分野で活躍する男性医療職

助産師ではありませんが、母子保健分野に関わる職業はほかにもあります。

産婦人科医

  • 国家資格。
  • 妊娠や出産に関する医療、女性特有の疾患の診断、治療を行う医師。

小児科医

  • 国家資格。
  • 子どもがかかる病気を診断・治療するとともに、子どもが健全に育つよう支援をおこなう医師。

専門看護師(Certified Nurse Specialist)

  • 日本看護協会が運営。
  • 13の専門看護分野があり、そのなかに『母性看護』分野がある。
  • 看護師として5年以上の実践経験を持ち、看護系の大学院で修士課程の単位を取得し、認定審査に合格することで取得できる。

認定看護師(Certified Nurse)

  • 日本看護協会が運営。
  • 21の認定看護分野があり、そのなかに『新生児集中ケア』や『不妊症看護』分野がある。
  • 看護師として5年以上の実践経験を持ち、日本看護協会が定める600時間以上の認定看護師教育を修め、認定審査に合格することで取得できる。

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まとめ

1.男性は助産師になれるの?

日本では、男性は助産師になれません。男性が助産師になるためには、法改正が必要です。

2.そもそも助産師ってどんな職業?

妊娠から出産、産後のケアや新生児ケアをサポートする専門職です。

3.日本では、男性はなぜ助産師になれないの?

法律で定められており、助産師の業務につけるのは女子のみとなっています

助産師の歴史のなかで、男性助産師の導入は議論されてきましたが、反対意見もあり導入にはいたっていません。

海外では少数ですが、男性助産師がいる国があります。

4.母子保健分野で活躍する男性医療職

産婦人科医、小児科医、認定看護師、専門看護師は性別に関係なく、資格を取ることができます。

今の日本では、男性は助産師になることはできませんが、今後の議論によりどうなるかはわかりません。

また助産師以外に、男性が活躍できる母子保健に関わる職業があることもわかりました。

海外では男性も助産師になることができます。

生命の誕生に関わる、さまざまなしごとに興味を持ちながら、情報を集めていけるといいですね。

  1. 研究代表者 金井 Pak 雅子、諸外国の看護職の性差に関する実態についての研究、令和 4(2022)年 3 月 ↩︎

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