【看護師の子育てと働き方】ママナースは変幻自在に働けます!

20代後半の女性看護師。

去年結婚して、新しい命を授かることができました。

ようやく安定期にはいり、母になる準備をしています。

今働いているのは、看護大学を卒業してすぐに就職した総合病院。

病棟勤務なので、三交代の夜勤があります。

看護師の仕事は好きだから、出産後も続けたい。

でも、妊娠・出産を機に退職していった先輩ナースも見てきました。

病棟勤務は夜勤や残業があるから、子育てとの両立はむずかしいのかな?

子育てしながら働きやすい職場ってどこかな?

これからママナースになる方へ、知っておきたいことを解説します。

看護師の働き方

働く看護師と辞めていく看護師

最近では、毎年6万人近い新人看護師が誕生しています。

実際にはどれくらいの看護師が、どんな場所働いているのでしょうか。

厚生労働省医政局看護課によると、看護職員就業者数は令和2(2020)年で約 173 万人であり、この 12 年間で約 33 万人増加しています。

病院、診療所で働く看護師が多いです。

高齢化の影響もあり、介護保険施設で働く看護師も増えてきています。

参考:厚生労働省 令和2年衛生行政報告例(就業医療者関係者)の概況

平成26年厚生労働省「看護職員の現状と推移」によると、看護師の離職率は、他産業に就く女性一般労働者に比べると、低い数値となっています。

しかし、一方で退職する看護師もいます。

おもな退職理由は以下になります。

  • 出産・育児のため(22.1%)
  • その他(19.7%)
  • 結婚のため(17.7%)
  • 他施設への興味(15.1%)

出産・育児が退職のきっかけとなることが多いのがわかります。

では、現在働いている看護師は、どんな理由で仕事を続けているのでしょうか?

看護師が現在の就業先で勤務を続けている理由、上位5つはこちらです。

  • 勤務形態が希望通り
  • 通勤の利便性が良い
  • 雇用形態が希望通り
  • 同僚との関係が良い
  • 時間外労働(残業)が少ない(ない)

看護師を続けていく上で、この5つの条件がポイントになりそうですね。 

出産後の働き方いろいろ

看護師が仕事と育児を両立するために、どんな工夫が必要になるでしょうか。

<産前から勤務していた病院で継続してはたらく場合>

  • 国の制度である、育児支援制度(短時間勤務制度など)や短時間正社員制度を利用した、短時間勤務を希望する。
  • 病棟勤務から外来や検査部門等への部署異動を希望する。
  • 雇用形態をパートタイムへ変更希望する。

産前と同じように残業をするなど、時間拘束が無理なこともあるでしょう。

育児支援制度を利用した短時間勤務や、残業の少ない部署への異動を希望することも必要になります。

育児支援制度は、申請すれば許可される制度です。

しかし、周りへの気遣いから実際の利用状況は、育児休業と有給休暇の取得以外を除き、40%以下となっています。1

勤務する病院の、
制度の取り組み状況を確認しておきたいですね。

産前から勤務していた病院の勤務条件が合わないようなら、看護師資格を生かしての転職も選択肢になります。

<ママナースが働きやすい施設>

施設名育児との両立をする上でのメリット
クリニック(診療所)日勤勤務のみ(一部有床を除く)。勤務が規則的。日曜日休みがほとんど。年末年始・お盆に休みが取りやすい。
訪問看護ステーション基本的に夜勤なし(担当制でオンコールがある)。
土日休みが多い。パート勤務であれば、週の勤務日数、勤務時間帯などはたらき方の希望が通りやすい。
デイケア・デイサービス夜勤なし。退勤時刻が早い。医療処置が少ない。
保育園夜勤なし。カレンダー通りに休める。医療処置が少ない。
特別支援学校夜勤なし。カレンダー通りに休める。退勤時間が早い。残業はほぼ無し。

転職におすすめのポイントは、残業が少ない、休みが取りやすい点になります。

短時間勤務の場合、雇用形態が常勤からパートタイムに変わることもあります。

採用条件をしっかりと確認したいですね。

仕事復帰へのサポート

出産・育児を機に離職した方に向けての支援もあります。

厚生労働省では、育児休業からの円滑な職場復帰を目指す方や、出産や育児を理由に一旦離職した方への支援をおこなっています。

仕事と育児を両立しながら再就職したい方に向けて『仕事と育児カムバック支援サイト』を開設しています。

また、日本看護協会が設置する都道府県ナースセンターでもサポートがあります。

就業、復職を希望する看護職に向けた、復職支援研修・実習の支援をしています。

仕事復帰に不安がある方は、こういったサポートを利用するのもよいでしょう。

転職をお考えの方は、こちらも参考にどうぞ。

妊娠したら知っておきたいこと

厚生労働省の政策に『女性の母性健康管理措置、母性保護規定』や『育児・介護休業法』があります。

妊娠したら知っておきたい、妊娠中・出産後の女性をささえる法律です。

『育児介護のための両立支援ハンドブック』も参考になります。

妊娠中・出産後の女性の体をいたわる法律

『男女雇用機会均等法における母性健康管理の措置』

❶事業主は、保健指導又は健康診査を受診するために必要な時間を確保できるようにしなければなりません。

健康診査等を受診するために確保しなければならない回数
妊娠中
妊娠23週までは4週間に1回
妊娠24週から35週までは2週間に1回
妊娠36週以後出産までは1週間に1回
産後(出産後1年以内)
医師等の指示に従って必要な時間を確保する
参考:厚生労働省「男女雇用機会均等法における母性健康管理の措置」

❷妊娠中に健康診査等を受け、受けた指導を守れるように、事業主は勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければなりません。

  • 妊娠中の通勤緩和(時差通勤、勤務時間の短縮等の措置)
  • 妊娠中の休憩に関する措置(休憩時間の延長、休憩回数の増加等の措置)
  • 妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置(作業の制限、休業等の措置)

❸事業主は、妊娠・出産を理由に、解雇等不利益な取扱いをすることはできません。

妊娠中・出産後の働き方を調整する法律

『労働基準法における母性保護規定』

産前・産後休業

産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)
(いずれも女性が請求した場合に限る)
産後は8週間女性を就業させることはできない。
(ただし、産後6週間を経過後に、女性本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務については、就業させることはさしつかえない。)
参考:厚生労働省「労働基準法における母性保護規定」

正社員のみでなく、契約社員やアルバイト・パートタイム等にも適用されます。

軽易な業務への転換を請求できる。

時間外労働、休日労働、又は深夜業の制限を請求できる。

育児・介護休業法

育児休業

  • 原則1歳未満の子どもを養育するための休業
  • 男女労働者のどちらも取得可能。勤務先の就業規則がなくても、法律に基づいて取得することができる。(労使協定により適用除外される場合もある)
  • 令和4年の法改正で、2回まで分割取得が可能。

産後パパ育休(出生時育児休業)

産後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて取得できる休業。1歳までの育児休業とは別に取得できる。

妊娠から子育てまでを支える公的手当て

妊娠・出産は病気ではないので、基本的に健康保険は適用されません。

妊婦検診費用(約10万円)、出産費用(約50万円)は自己負担となります。

これから説明する、公的支援制度を上手に使いたいですね。

制度内容
妊婦検診などの助成市区町村で上限回数が設けられており、上限回数14回の所が多い。全国平均は12回。(国の地方交付税措置)
出産・子育て応援給付金出産育児の見通しをたてるための面談や継続的な情報発信をおこない、必要な支援につなげる。
妊娠出産関連用品の購入費助成や産前産後ケア、一時預かり、家事支援サービス等の利用負担軽減を図る経済的支援(計10万円相当)
(実施主体:市区町村)
出産育児一時金
(家族出産育児一時金)
被保険者又はその被扶養者が出産した場合、原則42万円を支給。国民健康保険での支給額は、多くの保険者で原則42万円。
(国民健康保険・健康保険・共済制度)
出産手当金被保険者本人の産休中(出産日以前42日から出産日後56日まで)の間、1日につき直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額。
(健康保険・共済制度)
育児休業給付金労働者が1歳未満の子を養育するための育児休業を行う場合に、育児休業給付を支給。子が1歳を超えても休業が必要と認められる一定の場合については2歳まで支給。
支 給 額=
休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育児休業開始から181日目以降は50%)

(雇用保険法)
出生時育児休業給付金産後パパ育休を取得した場合、一定の要件を満たすと「出生時育児休業給付金」の支給を受けることができる。
支 給 額 = 休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数(28日が上限)× 67%(育児休業給付金と同じ)
(雇用保険法)
産前産後・育児休業期間の保険料免除国民年金では、第1号被保険者の産前産後期間(出産予定日の前月から4か月間)の保険料を免除し、免除期間は満額の基礎年金を保障される。
厚生年金保険では、産前産後・育児休業期間(3歳まで)の労使の保険料を免除し、免除期間は休業前の給与水準に応じた給付が保障される。
(公的年金制度)
児童手当 中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している人が支給対象。
・3歳未満一律15,000円
・3歳以上小学校修了前10,000円(第3子以降は15,000円)
・中学生一律10,000円

所得制限限度額あり。
(実施主体:市区町村、費用負担:国・地方)
参考:厚生労働省 「出産、育児、介護等との両立「育児休業給付の内容と
支給申請手続」
内閣府「児童手当」こども家庭庁「妊婦・子育て家庭への伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施」

子どもを預ける場所

どこに子どもを預ける?

いざ仕事に行くには、自分や夫が仕事をしている間、子どもを預ける場所の確保が必要になります。

平成27年4月から子ども・子育て支援新制度(こども家庭庁)が創設されました。

この制度で、利用者が活用できる実際の内容は以下になります。

施設に預ける認可保育園(0~5歳)、認定こども園(0~5歳)、幼稚園(3~5歳)、小規模保育(0~2歳)、事業所内保育(0~2歳)
自宅などで預かってもらう家庭的保育(保育ママ)(0~2歳)、居宅訪問型保育(0~2歳)、企業主導型ベビーシッター
保育等を一時的に利用する病児保育、ファミリー・サポート・センター、一時預かり
その他企業主導型保育、自治体独自の保育施設
参考:こども家庭庁 「子ども・子育て支援新制度(H27.4.1施行)のポイント」

注意したいポイント

施設利用の場合、地域によっては入園申請をしても、定員オーバーで入れない場合もあります。

申請時期は早めの確認が必要です。

また、幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する3歳から5歳までの全てのこどもたちの利用料が無償化されています。

ただし、通園送迎費、食材料費、行事費などは、これまでどおり保護者の負担になります。

申請時に実際の負担額を確認する必要があります。

祖父母など家族の協力を得られる場合は、上手に利用したいですね。

ここで、祖父母に預ける時にひとつ注意点があります。

現代の子育てと祖父母たち世代の子育てには、いわゆる「常識」が異なる部分があることを理解する必要があります。

自分たちが子育てをしていくなかで、これだけは守ってほしいという事柄がある場合、あらかじめ話し合っておくのが良さそうです。

情報・知識を蓄える

子どもの成長に伴う確認ポイント

子ども一人が生まれてから大学を卒業するまでに約2000万~3000万円かかるといわれています。

公的な支援を受けられる幼児教育・保育・小学校・中学校の卒業以降は、親の経済的負担も増えていきます。

子どもの教育費や習い事費用などについても、日頃から関心を持つことが大切です。

どれくらいの蓄えをしていけばよいのか。

そのためにはどんなは働き方をしていくのが良いかを考えていく必要があります。

親の成長に伴う確認ポイント

子どものための蓄えと同様に、自分たちのための蓄えも必要になります。

出産・育児を機に退職したり、パートタイムへ変更し仕事量の調整をおこなった方もいるでしょう。

自分がこれからどんな生活を送っていきたいのか、どんなふうに働いていきたいのか。

子どもの成長のタイミングを見計らいながら、考えることも大切です。

『仕事復帰へのサポート』の項でもお伝えしたように、看護師が復職するための支援はあります。

看護師の仕事とは離れるかもしれませんが、子どもにまだまだ手がかかるから家で仕事をしたい、という方には在宅ワークも選択肢になるでしょう。

社会保険制度のニュースなどもチェックし、自分が働くときに必要になる情報も身につけておきたいですね。

ママになってもお仕事グッズにはこだわりたい。そんな方におすすめです。

まとめ

看護師の働き方

  • 病院、診療所で働く看護師が多い。
  • 看護師の離職率は他産業の一般女性労働者と比べると低い。
  • 出産・育児を機に退職する人が多い。
  • 看護師資格を生かし、子育てと両立しやすい転職をすることができる。
  • 離職した人に向けて復職支援がある。

妊娠したら知っておきたいこと

  • 妊娠中から出産後までの女性を守る法律がある。
  • 妊娠中から子育てまでをサポートする公的手当がある。

子どもをあずける場所

  • 国の制度である『子ども・子育て支援新制度』を活用する。
  • 祖父母の協力を得る。

情報・知識を蓄える

  • どんなふうに生活していきたいか、子育てや仕事をしていきたいかを考えていくことも大切。
  • 仕事をする上で必要な社会の知識を身につける。

子育てと仕事の両立は難しいです。

子育てをしながら看護師をしていくのは、大変なことです。

うまくいかないなと思うことがあっても当然です。

でも、看護師のマルチタスク管理能力は素晴らしいです。

時間の使い方が上手です。

仕事で身についた能力を、ぜひ子育てにも活用して、子育て期間を楽しんでいけるといいですね。

  1. 西村淳子、子どもを養育している看護師の育児支援制度と施設整備に対する認識と利用状況、2014  ↩︎

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