災害時に薬剤師ができることとは?もしもの時にそなえよう!
災害というのは突然やってくるものです。こちらの都合も関係なく発生し、その深刻さに我々は自分の無力さを感じてしまいます。災害といっても一つだけではなく、パンデミックによる集団感染、地震による建物やインフラなどの崩壊、洪水などで泥水が入ってきたときの汚染問題、そういった災害に直面した時の懸念点の一つが健康への被害の恐れだと思います。
災害時の医療従事者の方々による活動の影響は大きいですがその中でも薬剤師の方々の活躍も欠かせないです。
日本薬剤師協会による「東日本大震災における活動報告書」によると岩手・宮城・福島に集中的に薬剤師の派遣を行ったと報告しています。
この記事では以下のポイントに絞って書いていきます
- 震災時の薬剤師の役割
- もっと貢献できるための資格紹介
震災時に薬剤師ができることとは?求められる役割と具体的な活動について
災害時での薬剤師の役割は医療救護所での支援活動(被災者への医療提供)、救護所での医薬品管理(支援物資に含まれる医療品の仕分け、服薬指導)、避難所での公衆衛生活動などその種類は多種多様です。こういった仕事を災害が起こった時にぶっつけでやろうとしても頭が追い付かないと思います。そこで予習という意味合いも含めて事前にチェックしておきましょう。
1-1医療救護所での支援活動
大きな災害が起きた時などは各都道府県が指定した避難所に大勢の被災者が集まります。また、指定された避難所以外にも多くの避難所が仮設されるかと思います。被災者が多く集まる場所には医療救護所が開設され、たくさんの医療関係者によるチームで運営され救助活動が行われます。
ここで注意しなければいけないことは、使用される医薬品の種類が平時の時と異なり限定される恐れがあることです。災害に見舞われた際は十分な物資が届くまで限られた医薬品で対処しなければならない場合もあります。そういったときに業務で使ったことがない薬を手にする機会も増えるかと思います。さらに医療用の医薬品の代わりとして一般の医薬品を活用しなければいけない場合もあります。
そういったことも加味して普段から薬の効能を調べたり、意識して配合される成分や薬の適正な使用方法について学習するといいでしょう。
1-2救護所での医薬品管理/被災者のメンタルケアや服薬指導
調剤所で活動するには場所の確保や設置場所を確保することも大事です。ここでは医薬品の管理などについて解説します。
実際に現場に行けば物が散乱としやすかったり人が多いということはそれだけ情報が錯綜しやすいでしょう。なので医薬品は五十音順や効能ごとにわけましょう。ジャンル分けすることは自分だけでなく周囲のスタッフにも見やすい管理方法なので情報を共有できると思います。特に保存に注意が必要な医薬品(要冷蔵、暗所保存)、取扱が必要な薬(麻薬、向精神薬、劇薬など)を適切な管理ができるように努めることが求められます。こういった薬品は厳重に管理しなければならないので医薬品の保管場所や調剤場所には関係者以外が立ち入ることがないような工夫も大事です。
薬品ごとに使用する頻度が違うので数のばらつきは激しいと思います。冷静でいられない状況ですのでいざ薬を使用したいと思っても見落としは必ずあるはず。ですので調剤した医薬品などを毎日集計し記録を作成して救護所での医薬品の種類及び数量は常に把握しておくと補給の手配がしやすいかと思います。ちょっとのことでもこまめに配慮することで足りることもあると思います。
業務上薬の調剤を日ごろから行っている薬剤師の役割は時として医者の立場よりも強力に立ち回ることができます。薬の知識や取扱に関しては医師よりも薬剤師のほうが上回っている場が多く、現場で限られた医療品で最良の処方・調剤ができるように在庫を把握し医師に対して薬の選択・提案を行うことも可能です。さらに服薬指導も行えば医師の数が少ない場面でも医者の代わりに薬の説明を行うこともできるはずです。加えて救護所での被災者の健康相談やメンタルのケアを行うことができれば平時の時よりも距離感が近くなり安心する人も多いはずです。
1-3避難所での公衆衛生活動
薬剤師は保健所、保健師、看護師、感染症専門家と連携して衛生管理を行います。消毒薬の管理については
(1)避難所の予防策としては入室するときには土足禁止、手や指を消毒してからの入室を心がけること。部屋の換気などにも注意することを努めることです。感染症(ノロウイルスや大腸菌)などの対策としては仮設トイレやトイレドアの取っ手などの消毒・除菌を徹底することが重要であります。特に梅雨シーズンから夏季まではウイルスが繁殖しやすいので注意が必要です。また炊き出し等では黄色ブドウ球菌対策として消毒に加え加熱できるものはしっかりと過熱を施し提供すること。含嗽薬や手指消毒薬の配置や補充を徹底し被災者や避難場所にいる人たちには「手洗いやうがいの励行」「手指消毒」等の呼びかけを行い張り紙なども避難場所に貼ることによって徹底します。また必要に清掃方法や消毒方法などを助言することによって相互的に公衆衛生活動を行うことも効果的だと思われます。
(2)害虫対策
夏場に大量発生しやすいハエや蚊などの対策として殺虫剤や薬品の液が入ったスプレー装置などを配布、設置することを心がけ仮設トイレやごみ置き場などの掃除をすることも忘れずに。
参考文献
・「薬剤師のための災害マニュアル」第7章 災害時の薬剤師の救護活動
もっと能力を高めたい!そのためのスキルや資格を紹介
1.災害医療認定薬剤師
災害医療認定薬剤師とは災害医療に関する専門的な知識や技能を所有する薬剤師を育成し、災害時の医療に関する研修を行ったり災害医療を発展させることを目的に作られました。
取得条件
災害医療認定薬剤師になるにはいくつかの条件があります。
- 日本国内において薬剤師免許を持っていること
- 薬剤師の実務経験があり、災害医療に関する研修を受けているまたは実災害対応経験があること
- 日本災害医学会の会員でありなおかつ会費2年分を完納していること
- 申請時に日本病院薬剤師会生涯研修履修認定薬剤師、日本医療薬学会認定薬剤師、日本薬剤師会生涯学習支援システム(JPALS)レベル5以上、薬剤師認定制度認証機構により認証された認定薬剤師、または、認定薬剤師制度委員会の認める実務経験を持つ薬剤師であること
- 災害薬事研修(PhDLS)世話人であること。もしくはPhDLSインストラクターかつ実災害対応経験を持っていること。
参考文献
・「災害医療認定薬剤師 申込受付のご案内」一般社団法人日本災害医学会
2.災害薬事コーディネーター
災害薬事コーディネーターとは災害時における保健医療活動における薬剤に関する課題解決のために動くエキスパート集団のことです。被災した都道府県は速やかに災害対策本部が立ち上げられ、その災害対策に係る保健医療福祉活動の総合調整を行うための本部が設置されます。彼らは災害本部にて被災地になんの医療品の需要があるかの把握を行ったり、それに対応した医薬品などの安定した供給の調整など図ることを目的としています。
災害薬事コーディネーターは各都道府県が任命します。都道府県ごとに災害薬事コーディネーターの研修会が行われているのでそれを受講する必要があります。詳しくは各県の情報を参照してみてください。
3.防災士
防災士とは様々な防災に関する知識や技能を習得し社会の防災力を高める活動を期待するために創設された民間の資格です。防災士の資格は地域や企業の防災活動においても活用できます。啓発活動を行うことができれば地域の防災意識を高めることにも貢献出来たり避難経路の確保、医薬品の供給ルートを考えることができたりするなど薬剤師の仕事にもつながる場合が多いので取得の検討はあると思います。
取得条件
- 防災士養成研修講座を受講し、研修履修証明を取得する
- 防災士資格取得試験を受験し合格する
- 救急救命講習を受け、修了証を取得する
- 前記3項目を終了することができた人には「防災士認証登録申請」を行う
前記の条件を達成すれば日本防災士機構から交付された「防災士認証状」「防災士証」が交付され資格を取得することができます。防災士の資格は必須ではないですが、取得すれば災害に関する知識などのスキルが身につくので現場を支援する活動に貢献することができます。
参考文献
・「防災士になるには」認定特定非営利活動法人 日本防災士機構
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は薬剤師の方々に向けた災害が起きた時の役割などについて解説しました。実際に災害に巻き込まれたらどうすればいいかわからないですよね。しかし薬を日ごろから扱っている薬剤師さんにしかできない役目はあります。なので持ち前の知識を活かして貢献できるような役割について考えて深堀してみました。もしも参考になりましたら幸いです。
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