薬剤師がプレッシャーに感じる事と辞めたいと思ったとき考えること

「薬剤師の仕事は安定している」と思われがちですが、実際には多くの薬剤師がプレッシャーを感じ、辞めたいと悩んでいます。

患者の命に関わる責任の重い業務、調剤ミスへの恐れ、職場環境のストレスなど、様々な要因が薬剤師に大きな負担を与えています。

本記事では、薬剤師が仕事にプレッシャーを感じる原因や、辞めたくなる理由について解説します。

薬剤師がプレッシャーを感じる3つの理由

ここでは、薬剤師がプレッシャーを感じやすい主な理由について解説していきます。

調剤ミスのプレッシャーが大きい

薬剤師は、薬を調剤する仕事であり、患者の健康や命に直接関わる仕事です。

調剤ミスが患者さんの命に関わったり、法的責任が発生してしまうなど、ミスが許されないので強いプレッシャーを感じやすいです。

薬の服薬指導

薬剤の使用方法を間違えれば、患者さんに悪影響が出るため、間違いが許されません。

特に多剤併用患者への指導は、薬の飲み合わせなども考慮し、組み合わせを考えなくてはならないので、医薬品の知識が問われます。

閉鎖的な職場環境がストレスになりやすい

薬局などの職場は、限られた空間での業務が多いので、ほかの業種に比べて閉鎖的になりやすいです。

薬剤師は異動が少ないので、苦手な人がいると逃げ場がありません。

なので、人間関係が悪化してしまうと、業務効率や職場の雰囲気がさらに悪化してしまう恐れがあります。

業務内容の多さが長時間労働につながる現実

ここでは、薬剤師の業務内容において、どんなことが負担に感じやすいかを取り上げます。

人手不足が長時間労働を加速させる

人手不足が長時間労働を加速させることについて、多くの報告があります。

例えば、厚生労働省の報告書では、人手不足が職場環境に及ぼす具体的な影響として、「残業時間の増加、休暇取得数の減少」が最も多く挙げられています。

参考文献「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」厚生労働省

業務内容への不満

調剤薬局では、処方内容が決まっているため、調剤業務などの作業を繰り返し行うことで単調な作業に感じる可能性が出てきます。

一方で、ドラッグストアでは、人手不足の場合にレジ打ちや品出し、商品の補充なども代わりにやる職場もあります。

なので、「自分は、なんでこんなことまでしなきゃいけないんだろう」と感じる薬剤師も少なくありません。

教育体制及び職場環境の問題

厚生労働省の調査によれば、新人薬剤師向けの卒後研修を実施している医療機関は全体の約3割にとどまることが報告されます。

参考文献「働き方改革の推進について(その2)」 P61. 厚生労働省

新人研修の教育・研修体制は、医療機関によって差があり、特に病床規模が大きい病院ほど研修が実施されている傾向があります。

逆に言えば、特に規模が小さい医療機関や薬局などでは、研修体制が十分でない場合があります。

そのため、新人薬剤師が適切な教育を受けられずに業務に不安を感じる人が多いと考えられます。

改善策

ここでは、そのための改善策を紹介します。実際の医療現場で取り入れた事例も併せて紹介します。

どんな方法でミスを防いでいるのか

・ダブルチェック体制の導入

調剤業務では、薬剤師同士が処方内容や調剤結果を確認し合うダブルチェック体制を整えることが、ミス防止に効果的です。

場合によっては、読み上げなども行うことも有効です。

ただ文字を読むよりも、音声で認識するほうが頭に入りやすいこともあるので適しています。

具体的なツールや技術

・調剤監査システムの導入

監査システムは、処方する際に薬剤の種類と数量などのチェックを機械が自動的に計るシステムのことです。

例えば、株式会社コンテックが制作した「audit」という製品があります。

これは、AIを搭載した調剤監査システムで、バーコード・画像・重量情報を用いて薬の種類と数量を正確に識別することが可能です。

これにより、調剤過誤のリスクを最小限に抑えることが可能になりました。

このシステムの導入により、薬剤師は調剤過誤の不安から解放され、より質の高い患者ケアに集中できるようになりました。(出典:PRTimes STORY

職場での取り組み

・ICT活用による業務効率化

ICT(情報通信技術)は、スマートデバイスやオンライン会議システムなどを活用して業務効率化を図る取り組みを指します。

医療機関では、ICTツールを活用することで医療情報を安全かつ円滑に共有することができます。

これにより、医療の質や安全性を向上させるとともに、業務効率化を推進することが求められています。

さらに、移動や紙媒体の作成が不要となり、業務時間の短縮やリモートワークなどの柔軟な働き方が実現します。

具体例

日本赤十字北見赤十字病院では、RPA導入1により、業務負担が大幅に軽減したり、精度の向上を実感できています。

RPAとは、定型的な事務作業を自動化する技術のことです。

以前は病名エラーが多数検出されたり、記入漏れなど、入力精度にばらつきがありました。

しかし、電子カルテへの病名代行入力におけるRPAを活用した結果、調剤記録業務が効率化され、ミス率が大幅に低下しました。 

国家公務員共済組合連合会横須賀共済病院では、これまで入院時に、患者の服用薬把握に平均でも25分、最長で3時間を要していました。

しかし、AI画像処理の導入が可能になったので、薬剤識別業務の負荷軽減を目指しています。

・短時間勤務制度と育児支援の成果

長野県松本市にある社会医療法人財団慈泉会 相沢病院では、夕方の時間帯や、夜勤の人員が人手不足になりやすい問題がありました。

人材の確保のために、子育て中の人員でも、病棟運営に協力してもらえるように、短時間勤務の選択肢を増やすことを考慮しました。

それにより、子育てと仕事が両立できる勤務環境の改善に取り組みました。

具体的には、一か月の労働時間を短縮できるように変更したそうです。

一日分の労働時間を短縮できない代わりに、働く時間と休む時間をメリハリよく分けるような調整をしました。

この育休短時間制度の導入後に、育休取得後率・育休後復職率は上昇傾向になりました。

なんと、2019年には、両者とも90%超に達していることがわかりました。

このような育児支援策の活用によるワークバランスが定着率向上につながることがわかりますよね。

・タスクシフトシェア

タスク・シフト/シェアとは、タスク・シフティング(業務の移管)やタスク・シェアリング(業務の共同化)を行う取組を指します。

医療の現場で、タスクシフト/シェアを利用することによって、医師の業務が可視化されやすくなります。

これによって、医師が一人で抱え込むのではなく、周りがサポートしやすくなって、一体感が生まれます。

加えて、特定の医師の仕事を他の職種に分散することで、医師への業務の集中を軽減することにつながります。

大阪医科薬科大学病院では、薬剤関連業務の実施体制を見直し、薬剤師を医薬品扱いのスペシャリストとして扱う方針としています。

例えば、医薬品の適正使用を推進し、医療の質や安全性確保の要として薬剤師を配置するようにしました。

これによって、医薬品の安全管理体制を高めやすくなりました。

こうした的確な人員配置を構築し、薬剤師をさらに専門分野に特化させることで結果的に医師や看護師の業務負担を軽減することに成功しています。

参考資料「勤務環境改善に向けた好事例集 令和4年度厚生労働省委託事業」 厚生労働省

薬剤師が活躍できる転職先とは?

では、実際に薬剤師が転職しようと考えたら、どんな職場があるのかを紹介しようと思います。

調剤薬局

調剤薬局では、医師が発行した「処方箋」に基づいて薬を調剤し、患者さんに渡します。

患者さんへの服薬指導や副作用の説明を行うことも多く、薬の正しい使い方を伝える重要な役割を担っています。

また、地域密着型の薬局が多く、地域医療の一端を担う仕事として高齢化社会でのニーズが高まっています。

調剤薬局で働くメリット

患者さんと直接顔を合わせる機会が多いため、感謝の言葉をもらえることがあります。

また、地域医療に貢献できる点もやりがいにつながります。

調剤薬局で働くデメリット

処方箋の内容がルーティン化しやすく、仕事が単調に感じる場合があります。

こんな人が向いている

患者さん一人ひとりに丁寧に向き合いたい人や、接客が好きな人に向いています。

ドラッグストア

ドラッグストアでは、処方箋による調剤業務に加え、OTC医薬品の販売や、お客さんからの薬の対応相談も受け付けています。

また、処方箋がない人に対しても薬の相談を受け、その人に合った適切な薬をチョイスします。

さらに、店舗運営に関する業務(品出し、在庫管理など)も行うため、幅広いスキルが必要な職場です

ドラッグストアで働くメリット

市販薬や、健康食品など、幅広い知識が得られるだけでなく、店舗運営の経験や接客スキルも身に付きます。

ドラックストアで働くデメリット

調剤以外の業務が多く、薬剤師としてのスキルとギャップを感じることがあります。

また、業務が多岐にわたるため、忙しくなりやすい傾向があります。

こんな人が向いている

お客様対応が得意で、幅広い業務に柔軟に対応できる人に向いています。

病院薬剤師

病院薬剤師は、病院内で医師や看護師と連携しながら、患者ごとの薬剤管理や服薬指導も行います。

医療チームの一員として、治療方針に基づいた処方提案や副作用の管理を担うため、専門知識が求められます。

また、院内製剤を作る業務や、患者に合わせた薬の調剤など、高度な技術を要する職場です。

病院薬剤師で働くメリット

薬に関する専門性の高い業務に携わることで、スキルアップが期待できます。

また、院内製剤を行うなど、医療現場ならではの経験が積めます。

病院薬剤師で働くデメリット

専門知識のアップデートが常に求められ、責任が大きい仕事です。

また、安全で正確な薬の製剤を行う技術が問われるため、精神的負担を感じることがあります。

こんな人が向いている

日々勉強し続ける意欲がある人や、医療チームとコミュニケーションをとりながら働ける人に向いています。

企業薬剤師

企業薬剤師は、製薬会社や医療機器メーカーなどの企業に所属し、仕事をこなします。

主に、新薬の研究開発や、品質管理、治験のサポート、医薬品の安全性の確認を行います。

また、医師や薬剤師に対して、医薬品の有効性や、安全性に関する情報提供を行っています。

それによって、現場の医療に携わる人を支援する重要な役目も担います。

企業薬剤師で働くメリット

医薬品開発や、研究に直接携わることができ、成果が目に見えやすいです。

また、土日休みや福利厚生が整っている企業が多く、キャリアアップの可能性も広がります。

企業薬剤師で働くデメリット

未経験では求人が少なく、入職までのハードルが高い傾向にあります。

また、転勤や出張がある企業もあり、ライフスタイルに影響を与えることがあります。

こんな人が向いている

探求心が強く、責任感がある人に向いています。

外資系の製薬会社では、英語を使う機会が多いので、語学力を活かして活躍したい人や、営業力に自信がある人も適しています。

また、常に勉強し続け得られた知識を使って、得意先のところがどんな医薬品を欲しているかなどの課題に挑戦し続けられる人などが適しています。

転職を失敗しないためのポイント

実際に転職しよう!と考えてみたものの、具体的に行動するには結構腰が重いですよね。

ここからは転職前に行うステップを紹介します。

転職前に作戦を練るのが大事です!

自己分析を行い、希望条件を明確にする

転職を考える際、まずは自分の強みや弱み、得意なこと・苦手な業務を整理してみましょう。

これにより、次の職場で求める業務内容や、働き方、目指したいキャリアが明確になります。

キャリアプランを立てる

「薬剤師として成し遂げたいこと」や、「人生における仕事の位置づけ」を考えることで、転職先や転職後の目標が見えてきます。

例えば、薬の専門知識を深めるために、薬の調剤分野に行くために経験を積みたい。

チーム医療の中で発揮できるようになりたい、などのキャリアの方向性を描くことが大切です。

情報収集を徹底する

転職先の企業情報や、求人内容を十分に調査しないと、入社後に自分の思い描いていたイメージとのミスマッチが生じやすいです。

これにより、またすぐに転職を考えたりするようになります。

そのような摩擦を防ぐためにも、給与、勤務地、土日休み、教育体制、業務量の把握、職場の雰囲気などを事前に確認しましょう。

希望条件の優先順位を設定する

転職するにあたって、何の希望条件を優先するかの順番を決めておくことも大事です。

給与や、福利厚生、スキルアップの機会の有無など、自分は働くうえで何を重視するのか、をはっきりさせておきましょう。

転職エージェントを活用する

一人で転職活動を進めると、情報が偏ったり、主観的な判断になったりしやすいです。

転職エージェントを利用することで、客観的なアドバイスや非公開の求人の紹介を受けられることができます。

また、履歴書などの作成もサポートしてくれるので、とても心強い味方になってくれます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、薬剤師のプレッシャーに感じやすいところなどを取り上げてみました。

「今の職場のプレッシャーがつらい」「もっと自分に合った環境で働きたい」と考えている方は、転職エージェントを活用するのがおすすめです。

その中でも「お仕事ラボ」は、薬剤師に特化したコンサルタントがあなたの転職活動をサポートします。

また、転職の間だけではなくて、転職後もコンサルタントから連絡が来ます。

もし、悩んでいることなどがありましたら、そこで担当の方とお話しすることができます。

もし転職で迷っているのなら、ぜひご活用ください。

理想の職場をイチから探し出す-お仕事ラボ

また、医療系の転職サイトは一つだけでなく、ほかにもあります。

転職サイトを利用するうえでのメリットや、各転職サイトの違いなどについても解説していますので、ぜひご覧ください。

薬剤師の転職サイトおすすめランキング3選!成功のポイントも!

  1. RPA(Robotic Process Automation)とは、業務の自動化を行うソフトウェア技術のことです。主に、データ入力や定型業務を自動化し、作業の効率化を図るために利用されます。 ↩︎

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