【薬剤師】薬学知識で社会を守る麻薬取締官とは〜オススメ書籍3選〜

薬剤師免許が活かせる就職先の一つに、「麻薬取締官」があります。

ドラマや映画などの題材になることもあり、その名前を聞いたことがあるかもしれません。

実際のところ、麻薬取締官はどのようなお仕事をされているのでしょうか?

この記事では、麻薬取締官に興味がある方に向けて、お仕事の内容を紹介します。

また、後半には麻薬取締官についてもっと詳しく知りたい方に向けて、オススメの書籍を3冊ピックアップしました。

ぜひ最後までご覧ください。

薬剤師免許が活かせる、麻薬取締官とは?

麻薬取締官とは、主に麻薬や危険ドラッグの乱用を防ぐことを任務とする国家公務員です。

俗に「マトリ」や「麻薬Gメン」と呼ばれています。

2025年現在、300人ほどしか在籍しておらず、まさに少数精鋭のプロ集団と言えるでしょう。そのうち2割ほどが女性職員で構成されています。

麻薬取締官は、違法薬物に関する犯罪の捜査・逮捕が可能な特別司法警察職員として活躍しています。

「特別」とあるように、一般的な警察と異なり、麻薬に関連する事件に限ってさまざまな権限が付与されています。

わかりやすい例は、一般警察には禁止されている「おとり捜査」が認められていることです。

おとり捜査とは、警察が身分を隠しわざと犯罪行為を起こさせるよう誘導して逮捕する捜査手法のことで、麻薬取締官だけに認められています。

麻薬犯罪の秘匿性・潜在性の高さのゆえにこのような特別な措置が取られているのです。

麻薬取締官の勤務地は日本全国に点在しています。

東京、大阪、福岡など主要な12の都市に麻薬取締支部・支所が設置されていて、いずれかの拠点で任務にあたることになります。

そして原則として転勤があり、全国転勤になります。

これはひとつの土地に長く勤務していると、いずれ顔割れしてしまい捜査に悪影響を及ぼす危険性があるためです。

そのほか捜査官の情報を守るために、決して報道陣の前に出ることがないなど、麻薬取締官とは裏方から日本の治安を守るお仕事と言えるでしょう。

麻薬取締官の主なお仕事は3つ

麻薬取締官の主な業務は、おおよそ次の3つに分けることができます。

  • 違法薬物の捜査・取り締まり
  • 医薬品である麻薬や、精神向上薬の流通・管理・保管の監視
  • 啓蒙活動や相談窓口の業務

麻薬取締官の多くは、違法薬物の捜査・取り締まりを行う捜査課に配属されます。

そのほか、捜査で押収した麻薬や毛髪を鑑定する鑑定課であったり、総務など事務員として勤務する取締官もいて、その業務内容は幅広いと言えるでしょう。

この記事では、上記に挙げた3つの主な業務について詳しく解説します。

違法薬物の捜査や取り締まり

麻薬・覚醒剤・大麻・あへん・危険ドラッグといった違法薬物の捜査・情報収集活動を行います。

情報収集のルートは多岐に渡り、地道な張り込みや聞き込みに徹することもあれば、警察など捜査機関から情報を共有されることもあります。

1日数時間の張り込みはもちろんのこと、徹夜の張り込みが連日続くことも珍しくありません。

近年、捜査対象は薬物乱用者だけでなく暴力団やマフィアなどの外国勢力に及ぶことも増えてきました。

内偵捜査は規模の大きいものだと、捜査期間が半年近くになることもあります。

このような麻薬犯罪の捜査には危険が伴うこともあり、特別に拳銃の所持が認められています。

麻薬取締官は逮捕術や拳銃の射撃訓練に日夜はげみ、もしもの場合に備えているのです。

加えて、インターネットやSNSの発展によって、薬物犯罪は増加傾向にあります。

そもそも薬物犯罪は、一般的な犯罪に比べて潜行性が高く、また巧妙に隠しつつの活動になるので表に出づらいことが特徴です。

麻薬取締官は水面下で取引される麻薬にも目を光らせているのです。

医薬品である麻薬や、精神向上薬の流通・管理・保管の監視

麻薬は普通の人からすると、ほど遠いイメージがありますが、実際はわたしたちの生活に密接に関わっています。それが「医薬品」です。

病院や薬局で処方される医薬品の中には、睡眠薬や精神向上薬など、乱用すれば麻薬に近い効果を表すものが多数あります。

そのため医薬品が適切に流通・管理・保管されているか、横流しなどされていないか監視することも麻薬取締官の業務の一つです。

病院や薬局、製薬会社などに定期的に立入検査を実施することで、医薬品の乱用を防いでいるのです。

啓蒙活動や相談窓口の業務

麻薬取締官は、青少年が麻薬に手を出すことのないように、学校での薬物乱用防止の講演会を実施して知識を深める活動も行っています。

薬物乱用防止の第一歩は正しい知識を身につけること。そして正しく行動できるコミュニティーを広げることです。

いまや子供や主婦、誰であってもSNSを通じて簡単に麻薬を手に入れられる時代になりました。

違法薬物を摂取するとどうなるのか、家族・友人関係の崩壊や金銭的破綻などの事例を詳しく伝えて薬物の危険性を訴えることを目的としています。

また、実際に薬物に手を出してしまった薬物乱用者が社会復帰できるように指導したり、アドバイスを行っています。

薬物依存からの回復を支援するプログラムを実施して、社会復帰を後押しすることも麻薬取締官の使命です。

麻薬取締官をもっと知りたい方へ、オススメの書籍3選

麻薬取締官について、詳しく知りたい方へオススメしたい書籍を3冊紹介します。

インターネットだけでは知り得ない生々しい現場の空気、日本を蝕む麻薬犯罪について知ることができますよ。

①『マトリ 厚労省麻薬取締官』瀬戸 晴海

元麻薬取締部の部長が書き下ろした一冊です。

2020年1月に新潮新書から初版が発行されました。

40年近く第一線で麻薬と戦い続けた著者だから描ける、現場の緊張感や麻薬のおそろしさが事細かに記されています。

その内容はまるで良質な映画を観たかのよう。読み終わったあとも側頭部をガツンと殴られたような衝撃が残り続けます。

本書では薬物犯罪の捜査にフォーカスが当てられており、読み物としても純粋に楽しめます。

今後の捜査に支障が出るためか、詳しい捜査手法はぼかしているものの、その臨場感はさすがと唸るほど。

続きが気になり、思わずページをめくる手が汗ばんできました。

普段、私たちは生活していて麻薬や危険ドラッグと無縁の生活を送っているように思います。

ですが、違法薬物は私たちのすぐそこまで迫っていることを実感させられました。

いま、麻薬に手を出さずに済んでいるのは、ただの幸運なのかもしれません。

前述の通り、薬物の犯罪捜査をメインに据えた内容となります。麻薬取締官の司法官的な側面を知りたい方にはピッタリの一冊でしょう。

その一方で、麻薬取締官の業務全体を俯瞰的に知りたい方には物足りないかもしれません。

泥臭く、でもかっこ良い麻薬取締官の魅力が存分に詰まった一冊です。

②『麻薬取締官』鈴木 陽子

こちらは2000年9月に集英社新書から発行されました。

著者は薬剤師として合格後、麻薬取締官として7年間活躍し、専業主婦を経て医師になったという異色の経歴の持ち主。

この書籍では、違法薬物に認定されている麻薬がどのように生み出され、乱用されるにいたるまでを丁寧に紹介しています。

戦後の混乱期から始まったとされる日本の麻薬事情についてもわかりやすく解説されており、麻薬史の入門書のような側面も持ち合わせています。

また、麻薬に関して医師らしい視点での解説も魅力のひとつ。医薬品としての麻薬(麻酔薬)のあり方や使用例を紹介しています。

そして中編では、麻薬取り締まりの実例を短編小説のように細かく紡いでおり、読者を飽きさせません。

当時現役の麻薬取締官の手記も寄稿されていて、不謹慎かもしれませんが、最後まで楽しく読み進めることができました。

麻薬と麻薬取締官が辿ってきた歴史を俯瞰的に知りたい方には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

ただし本書は2000年に第一刷が発行されており、情報もそれ相応に古いことは留意しておきましょう。

古さゆえに入手するには手間取るかもしれません。近くの図書館などを活用し、蔵書検索をかけてみると良いでしょう。

③『エーテル5.0 麻薬取締官・霧島彩』辻 寛之

最後に紹介する本は「エーテル5.0 麻薬取締官・霧島彩」です。

こちらは2021年7月に光文社文庫から発行されました。

この本は麻薬取締官を題材にした、長編ミステリー小説です。

作者の辻 寛之氏は、2018年に日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞と同時にデビューしている実力派。

本作は通算3作目になります。

主人公は麻薬を憎み、麻薬犯罪を撲滅するため日々奮闘する麻薬取締官「霧島彩」。

単身で実行した潜入捜査をきっかけに、妙な薬物事件に巻き込まれていきます。

事件の鍵を握るターゲットは捜査線上に浮かんでは消えを繰り返し、読者も「彩」と共に振りまわされるでしょう。

まるで麻薬中毒の幻覚を見ているように二転三転する物語は、最後まで一気読みさせるほどのパワーに溢れています。

麻薬取締官を主人公に据える小説はあまり多くはなく、とっつきにくさを感じるかもしれません。

ですが、本書は「警察×ミステリー」の王道を行く構成となっており、事前情報がなくてもエンタメとして楽しむことができます。

もちろん麻薬や麻薬取締官に関する知識がふんだんに散りばめられており、小説を楽しみながら自然と学べる内容になっています。

シリーズ化もされており、とても面白いのでぜひ気軽に手に取ってもらいたい一冊です。

まとめ

この記事では麻薬取締官のお仕事内容と、さらに詳しく知ることができる3冊の書籍を紹介しました。

麻薬取締官はその特性上、国家公務員の中でもかなり特殊な職業と言えるでしょう。

この記事が麻薬取締官への理解を深める手助けになれば幸いです。

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