循環器内科医の【果てしなき忙しさ】に医療の難しさを顧みる大切さ

ここは某県のとあるゴルフ場。

ある日、茶店で施設管理スタッフが作業をしていると、突然Aさんが胸が苦しいと倒れて、意識もうろうの状態になりました。

声をかけても反応が弱く、服を緩めて心臓マッサージをしながら、救急車が来るのを待ちます。

AEDを使いますが、Aさんの反応は芳しくありません。

到着した救急隊と交代して、とりあえずゴルフ場側は職務終了ですが、救急隊はここからが仕事です。

循環器内科医を探して、処置をしながら、各所にコールを始めます。

しかし、おりしも夏です。

どこも救急医療が満杯で、受け入れ病院はなかなか見つかりません。

あなたがAさんのお連れ様としてこの場に居合わせたら、一体どうしますか?

そして、循環器内科医はなぜ減少しているのでしょうか?

循環器内科医が減少していると言われる今、患者さんができること、心がけるべきことは何かあるのでしょうか?

今回はそれを考えていきたいと思います。

「循環器内科医のいる近くの3次救急全て埋まっています!」

救急隊は電話を何軒も掛けていますが、病院は救急患者で膨れ上がっているようで、またしても断られたようです。

次で5軒目の電話ですね、とAEDを持ってきたスタッフと会話をしていると、見出しの叫び声が聞こえます。

病院が決まらないと、救急車は出発さえできないのです。

Aさんの状態はどうなのか?と考えていると、救急隊員にAさんの住所がわかるものはないですかと聞かれました。

慌てて、カートのミニボストンバッグから免許証を見つけて、自宅は別の某県方面と判明しました。

急遽、別の方面の病院にドクターヘリを飛ばせるか救急隊員が連絡を取っています。

Aさんは一刻の猶予もなくなってきているようです。

一刻を争う中で医療専門ではない人たちに出来ることは何か

その後、どうやら話がついたようで、当ゴルフ場にドクターヘリを止められる場所があるか聞いてきました。

ゴルフ場の1番ホールがいつもドクターヘリの出発地です、とスタッフが答え、カートで先行しながら、救急車を案内し、ドクターヘリの到着を待ちます。

その間、ゴルフ場のスタッフとしては、はじめに書いた応急処置をし、AEDを使い、無事にこちらの世界に戻って来てくれることを祈ることしかできません。

一緒にいたあなたは驚いて、恐らくあたふたするでしょう。

大丈夫です、落ち着いてスタッフや救急隊の指示に従って行動すれば、あなたにも人助けはできるのです。

それがささやかながらでも、命を繋ぐリレーになります。

ドクターヘリに安堵するも循環器内科医の言葉は【重く厳しい】ものでした

ドクターヘリが到着し、循環器内科医が降りてきました。

一瞬安堵したものの、救急車の中の様子を見て、言われた言葉は多分、一生忘れないでしょう。

ドラマのセリフではない、本物の言葉。

「状態は非常に厳しいですので覚悟してください。ご家族には連絡は取りましたか?」

「連絡は取れましたが、どこの病院に行けるかわからないので、自宅で待機していただいています。」

「分かりました。今から〇〇総合医療センターに向かいますので、こちらの電話番号と住所、私の名前を伝えてください。」

そして、ドクターヘリは彼方へ去って行くのでした。

【後日談】ご家族の手紙がチクチクと胸に刺さります

結局その後、Aさんは亡くなりました。

心筋梗塞だったと、ご家族の方からの電話での報告と届いた手紙で詳細を知った次第です。

葬儀について書かれた封筒にAさんのお名前と中の手紙には急逝したことが書かれていました。

辛い最中なのに、スタッフたちにご自分を責めないでください、とまで書かれていて、余計に胸が締め付けられます。

せめて病院が早く見つかっていれば【循環器内科医が足りない】

いくら熱中症の患者さんも増える時期とはいえ、夏は心筋梗塞にもなりやすい季節とも言われています。

水分摂ってくださいね、無理はいけませんよ、真夏は運動はやめましょう、さまざま言われます。

ここのところ、接待ゴルフなどは少なくなっているとはいえ、仕事のためには止められないものです。

ゴルフでなくても別の仕事などで炎天下を歩くことも多々あるでしょう。

いざ、症状を起こした時に診てくれる医師がいなかったら、どんなに生きたくても先ほどの話のように亡くなってしまうこともあるわけです。

現在【循環器内科医】はどのような状況にあるのでしょうか?

一説には忙しくて、医師として、一番行きたくない診療科とも言われているようですが、どうなのでしょうか?

オンコール、緊急手術、時間外労働、患者数の多さ、状態の急変が多い、イメージとしてはそんな感じでしょうか。

ゴルフ場に勤める同僚は今から約10年前、ある病院の循環器内科の医療事務として勤務していました。

当時から、外来中にオンコールが鳴って、外来診療が止まるのは日常茶飯事でした。

心臓カテーテル手術の電話を医師や看護師の代理として予約をして、患者様に説明したりと事務でさえ忙しいのです。

この長寿高齢者社会、その当時と比べても今の医師は忙しいであろうと容易に想像がつきます。

そもそも循環器内科医はどのような病気を診るのですか?

心臓血管及び、関連するリンパ管などの循環器系に生じる、様々な疾患の診断治療を専門とします。

具体的な病気としては、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心臓弁膜症、心不全などの心臓病。

そのほか、高血圧症、動脈硬化、動脈瘤、静脈血栓症、肺塞栓症といった血管の病気、さらには糖尿病や高脂血症の生活習慣病も対象となります。

循環器内科医は現在日本にどれくらいいるのですか?

厚生労働科学研究成果データベースによると、2025年現在、循環器専門医は 12,170 人です。

このうち病院医師は 8,118 人(67%)、診療所医師は 4,052 人と言われています。

その業務の厳しさは後述しますが、他の診療科に比べて、志望する若手の医師が現在、少なくなっています。

そのため、平均年齢も高齢化が進展しているとのこと、このままでは、30年後に約2割減少すると言われています。

一人で患者さんを診る平均人数は何人ですか?

平均的な患者数として、以下のような要因で大きく変動するため、一概にその値を割り出すのは難しいのがこの診療科の特徴ともいえます。

  • 勤務先の種類:大病院かクリニックか、都市部か地方か
  • 担当業務:外来のみか、入院患者も担当するか、緊急対応(CCU)などもあるか
  • 診療時間:1日に何時間、週に何日診療するか
  • 患者1人にかける時間:初診か再診か、専門的な検査や処置が必要か

以上のことから、少なくとも、人数はともかく、決して楽ができる場所ではないのが見えてきます。

本当に行きたくない科だとすれば、それはなぜですか?

現在、日本においては死因第2位と言われる、心疾患は今後、ますます高齢化が進む中で、増えていくものと思われます。

さらに、循環器内科は他の内科よりも緊急対応が多く、患者の方の命を守るため、24時間365日オンコール体制という、特有の診療体制の維持が必要です。

更に看護師や技師等、他業種に業務移管ができたとしても効果は限定的です。

無理をすれば、自分が壊れかねない危険性をはらんでいると言えます。

若手医師だって人の子で、どんなに正義感があっても、自分の命が大事と思うのは誰も同じことです。

先ほどの話の通り24時間365日オンコールでは、本人が志望したとしても、家族が反対するかもしれません。

一人の親として、ある日、家族で遊園地に行く時間ができたとしても、1本のコールであっけなく楽しい時間は飛んでいきます。

また、仮に結婚を前提に付き合っている人がいれば、相手の周りの人達を含め、時間に余裕のある診療科を選んで、安心させたいと考えるのも無理はないことです。

以上のことなどから、進んでは行きたくない診療科と言われています。

忙しさの中で必死に助けようとする命に対する患者としてのあり方

先ほどの手紙の人のようにどうか、ご自分を責めないでくださいと言ってくださる方が多数だとは考えています。

ただ、中には、もっと早くできたでしょう!!とか、当たった病院が、医師が悪かったとか言う人もいます。

確かにやるせない気持ちはわかりますし、どこかに怒りや悲しみをぶつけたいのも理解できます。

だからと言って、誰のせいでもないことを何かのせいにして、 SNSや口コミなどに話を広めるのは止めたほうがいいでしょう。

いわれなきSNSや口コミなどのために医療の現場が減ってしまっているのもまた事実なのです。

医療は口コミランキングなどで測れるようなものではありません。

正当な評価は必要ですが、うわさ話をそのまま鵜呑みにしていないでしょうか?

患者の側にも、考えるところはありそうです。

循環器内科医の忙しさに目を向けて下さい

ここまで書いてきたように、循環器内科医の皆さんは、患者さんをできるだけ助けてあげたいと必死になっています。

ですが、先ほど書いたように絶対数が足りないのです。

ゴルフ場スタッフも皆、会社で健康診断をしてもらいますが、心電図でいつも引っかかる女性がいます。

そこで精密検査のために検診をしていただいた大病院の循環器内科に行くとのことです。

彼女曰く、外来の待合室はいつも混んでいて、早く帰りたいと考えるんだけど、思うようにはいかないわと嘆いていました。

循環器内科医は外来にいてもオンコールが鳴れば、外来診療を一旦止めてしまうくらい、外来にいれば安心なんて診療科ではないのです。

循環器内科医はこの果てしない忙しさの中でいつも考えています。

誰一人の命もこぼしたくない、だからオンコールの患者さんのもとに向かうのです。

反面、外来患者さんを早く家に帰らせてあげたい、その狭間で辛い思いをしながら、外来診察を止めて、待たせることもあるのです。

人間が人間を診ている以上、医師といえど自分の選択に迷いを持っている証拠であり、医者だってパーフェクトではないという証明なのです。

もしかしたらオンコールの患者の処置をしている間にも、外来の患者さんに何か起こったらと考えながら気が気ではないでしょう。

その気持ちに患者として、少しでいいから目を向けるべきなのです。

なかなか出来ないかも知れませんが、先生の言った通りに薬を飲み、運動して、食事に気を使うのが大切なのです。

そして、分からないことはきちんと分かるまで聞いてみるなど、できるだけの手段をとってみましょう。

それが、循環器内科医の皆さんを少しでも楽にできる方法なのではないかと考えます。

これからの高齢化社会で必要な循環器内科医の存在として

これからは、循環器内科医の存在はますます大きくなっていくでしょう。

少子高齢化はますます進み、心疾患に罹患する患者さんが増えると言われています。

心臓は生きることの根本の臓器です。

心臓が動かなくては、当たり前のことですが、人間は生きられません。

それを診るのが循環器内科医で、生きるか死ぬかを見極めるのですから責任は重大です。

その分、患者さんが無事に元気になった時、病状が安定している時の安心感や喜びは、他の診療科よりも大きいのではないかと感じます。

患者様に寄り添い戦う覚悟でいることの大変さ

とはいえ、もしかしたら喜びより悲しみの数の方が多いかもしれませんし、医師としては考えるところもあるでしょう。

循環器内科は確かに行きたくない診療科かもしれません。

しかし、命を守るプロになると循環器内科医を志望することを決めたのならば、出来るだけ患者様に寄り添い、時には戦うことを覚悟しなくてはいけないのです。

辛いけれど、おそらく一番、患者様の生死に向き合うことの多い診療科であることは紛れもない事実なのです。

これから、ますます、高齢化の波は大きくなるでしょう。

その時に循環器内科医がいなかったら、救える命も救えなくなる日が来てしまいます。

それは、もしかしたら既に始まっているのかも知れません。

今、循環器内科医をしている方は計り知れない覚悟で必死で仕事をしているのだと感じます。

そして、若手医師で循環器内科医を目指している人はどうか、その気持ちが揺らがないことを願いたいです。

とはいえ自分を犠牲にしないでください

とはいえ、自分の人生です。どうしても辛くなることもあるでしょう。

そんな時は他の診療科への転科や、独立も視野に入れるといいかも知れません。

循環器内科医として仕事はしたいけれど、過酷な環境はちょっと、と考えるのであれば、転職もありだと考えます。

どうか、一人で抱え込まないで、どこかに相談してください。

きっと道はどこかに開けているはずです。

そして、自分の医師人生に迷った時はここ【医師の転職サイト】に来てください。

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まとめ

循環器内科医は確かに忙しさが他の診療科に比べて、半端ないです。

しかし、人間にとって、一番必要な診療科であることには変わりありません。

人の生死は誰かが見なくてはいけない、それが循環器内科医なのです。

果てしない忙しさに心が折れることもあるかも知れませんが、患者さんは皆頼りにしています。

それを忘れないでいて欲しいのです。

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